松本市美術館

美術館について

故郷に吹く風

松本市美術館館長 小川稔

松本市美術館館長 小川稔

 

松本市は本年、文化庁主催の東アジア文化都市に選ばれ、様々な関連事業が展開します。都会からは遠く、高い山脈に囲繞された風土に個性的な文化が根付いたことを国内外の人々に知って頂く機会になることを願います。

 

春の企画展として「つぐ minä perhonen」(4月16日〜6月7日)を開催します。ミナ ペルホネンはわが国を代表するファッションブランド。手仕事を原点とする繊細な技術が作り出す布や衣服が多くの人に支持されています。恒例の「工芸の五月」月間にふさわしい展覧会となるでしょう。創始者・皆川明氏が北欧文化に触発され興した事業ですが、卓越したモダンデザインの故郷、北欧の冷涼な気候風土はどこか松本につながるような気がします。自然界から抽き出されたデザイン思考が現代人の日常生活に寄り添い、幸福感を生み出すことに注目したいと思います。 

 

「ウジェーヌ・ブーダン展」(7月7日〜8月30日)ではフランス北部、ノルマンディーの港町に生まれた画家ブーダン(1824−1898)の魅力的な風景作品をご覧いただきます。ここでも故郷の海辺の自然が芸術を産み出したことを教えられます。広い空に浮かぶ雲、刻々変化する海景から心地よい潮風が感じられるようです。アトリエを出て、光溢れる屋外の「今・ここ」をキャンヴァスに写す手法がモネらの印象派を誕生させました。

 

Sustainable World-佐藤大史・磯部昭子 ふたりの視点から―」(9月19日〜12月6日)は信州ゆかりの写真家二人が企業の先端技術と協働する企画です。広告、雑誌媒体にアートディレクターとして先鋭的な作品を発表する磯部昭子。そのポップでカラフルな人工世界と対照的なのが自然を撮る佐藤大史。アラスカを中心に世界を巡り、厳しい大自然に生きる動物たちの記録を続けています。

 

幕末から明治に至る近代美術史が絵画だけで語られることは見直されなければなりません。欠けた視点として明治期の書があります。「生誕200年記念 中林梧竹展」(1月16日〜3月22日)は明治期の書家、信州とも縁が深かった中林梧竹(1827−1913)の回顧展です。当時、洋画家がフランスを目指したように梧竹は同時代の中国・清で書法を学び、古代の書、金石文の伝統を持ち帰りました。黒・白の明快な造形作品である現代書はここに出発します。孤高の書家であった梧竹は「百年後には自分の作品が理解されるであろう」との言葉を残しましたが、今展はその機会となるでしょう。

 

松本市美術館館長 小川稔

HOME美術館について館長あいさつ

PAGETOP